フランス料理の歴史
16世紀~意外に歴史は浅いフランス料理
フランス料理は、16世紀にイタリアよりもたらされた、当初はフランス王国の宮廷料理だった献立の総称。 ソースの体系が高度に発達していることが特徴で、各国で外交儀礼時の正餐として採用されることが多い。 狭義としては、こうした正餐に用いる厳格な作法にのっとったオートキュイジーヌと呼ばれる料理を指す。 ※オートキュイジーヌ フランスの伝統的な高級料理を指す。複雑な味付けと手の込んだ飾り付けが特徴。 広義にはフランスの各地方には一般庶民に親しまれている特徴ある郷土料理などフランスの伝統料理全般も含める。 英語では「French cuisine(フレンチ・クィズィーン)」と呼ぶことが多く、「料理」を意味する名詞「クィズィーン」を省略する習慣は口語以外ではあまりない。 ユネスコの無形文化遺産に登録になっているのはフランス料理の「美食術」である。
歴史 料理は“手づかみ”からイタリア人の手で大変化
中世時代フランスで食べられていた料理は食材を焼いて大皿に乗せ、手づかみで食事を行うという非常にシンプルなもの。 現在のフランス料理の原型は、ルネサンス期のイタリアからやってきたカトリーヌ・ド・メディシス(当時フランスの王であったアンリ2世と婚姻した)とその専属料理人によってフォークなどの道具も、もたらされたと言われ、当初は粗野であったフランス料理に変革をもたらし、ブルボン王朝の最盛期に発達した。
フォークのヨーロッパでの広がり
フォークが導入されるまでは、西ヨーロッパではスプーンでスープを飲み、ナイフで肉を切りながら、主に手づかみで食べていた。 初期のフォークは歯が2つしかなかった。単に肉を切るときに切りやすくする道具であり、歯はまっすぐで食べ物に突き刺すにはよかったが、すくって口元に運ぶのには適していなかった。 イタリアでは14世紀にフォークがよく使われるようになった。一般的に使用されるようになるのは、16世紀に礼儀作法の一部となってからである。1600年頃までには商人や上流階級の間でごく一般的に使用されるようになった。 一方、南欧以外のヨーロッパでは、フォークがなかなか浸透せず、1553年にメディシスがアンリ2世王に嫁入までフランスにはフォークを用いる文化はなかった。 1770年代、4本歯のテーブルフォークは、パスタを手で食べるときに画像のように下からすするしかなかった。 毎日パスタを食べたいナポリ国王フェルディナンド4世のために(さすがに食べ方が見苦しいため)、長く3本だったフォークをもとにして、安全でスパゲッティがうまくからむよう先を短く4本にしたフォークを考案したといわれている。
フランス革命で宮廷料理人が無職に→街で料理人になり広がる
1787年に王権に対する貴族の反抗に始まったフランス革命に伴い、ハプスブルク家により、ロシア、ドイツなどの宮廷に広まった。 また、革命以後、宮廷から職を追われた料理人たちが街角でレストランを開き始めたことから、市民の口にも入るようになった。
19世紀は大皿料理→ロシアから逆輸入で小分けでの提供へ
19世紀に入り、カレーム、彼の弟子であるグッフェ、そしてデュボワにより大きく改革された。 例えば、それまで多くの料理を同時に食卓に並べていたのを改め、一品ずつ食卓に運ばせる方式を採用した。 これは、寒冷なロシアで料理を冷まさず提供するため、フランス料理の料理人が工夫したものがフランスに逆輸入されたといわれ、ロシア式サービスと称される。 そして彼はコース料理を考案したエスコフィエへと引き継がれ、現在でもフランス料理のバイブル『料理の手引き』を1903年に刊行した。 その後、1930年代に、ポワン、アレクサンドル、ピックらが、エスコフィエの料理を受け継ぎながら、さらに時代にあった料理へと改良していった。 ポワンたち3人の理念は、ポワンの弟子であるボキューズ、 トロワグロ兄弟 、ウーティエらに受け継がれた。 フランス料理は、イタリア料理、スペイン料理、トルコ料理、モロッコ料理など歴史的にヨーロッパ・北アフリカ・西アジア料理の影響を受けてきた。 1970年代にボキューズたちは日本の懐石料理を取り入れて、軽いソースや新鮮な素材を活かした調理など「新しい料理」を創造し、ミヨがこれを「ヌーベル・キュイジーヌ」(フランス語で「新しい料理」)と呼んで、世界中に広まった。 1980年代に入ると、ロブション、ガニェール、デュカス、ロワゾー、パコーらが、エスコフィエの精神を生かしながら、キュイジーヌ・モデルヌと呼ばれる、さらに新しい料理を創造している。
「食通」が生まれた19世紀
料理法の発達とともに、食器、作法なども洗練され、味の良し悪しを批評する職業としての食通も生まれ、19世紀前半に、ブリア・サヴァランが『美味礼讃』を著して美食学(ガストロノミー)と美食文学の伝統を確立した。 『ミシュランガイド』、『ゴー・ミヨ』などのレストランの格付けを行うガイドブックが発行されるようになった。 高級料理店のような厳格な作法が求められない安価なフレンチレストランやビストロでも、前菜、メイン、デザートという流れはいずれも持っている。 しかし前菜を省略することもできるし、デザートの替わりにコーヒーやお茶で済ますこともある。 日本で日本国外の来賓への接待としてフランス料理が使用されるようになったのは、1873年からという。
代表的なマナー
・ナプキンは全員が着席し、主賓が手にしてから他の人も取る。途中で中座するときはナプキンを椅子の上に置く。 ・ナイフやフォークなどは外側から順に使う(複数テーブルに並んでいる場合)。 ・とりあえず皿へナイフ・フォークを置く場合は、八の字の形にする。 ・食べ終わったら、ナイフは刃を内側にして、フォークと共に先を上にして皿に並べておく。