トルコ料理の歴史
トルコ料理は、トルコのトルコ民族の郷土料理であり、世界三大料理の一つ。
特徴 「ケシケキ」がユネスコ無形文化遺産。「トルコ料理」ではない。
東西の食文化を融合させた多彩な素材、味、調理法を持つことが挙げられる。
・中央アジアの食文化である羊を中心とした肉料理
・ヨーグルトやナッツ類を料理に使う
・黒海、地中海などの海産物を利用する
・冷菜には地中海周辺で取れるオリーブ・オイルを使用する(温菜にはバターが好まれる)
・アラビア周辺からひろがった小麦粉とアジアの主食である米の両方を使う
トルコの国内でも地域ごとに異なる特徴をもつ郷土料理もあり、例えば、北部黒海沿岸地域ではトウモロコシやアンチョビをよく使い、南東部ではトウガラシの風味が強いケバブ類を発展させており、西部では、特産のオリーブ・オイルの風味を活かした料理が多く、中央部の中央アナトリア地方では、パスタ料理が名高い。
トルコの伝統料理ケシケキ(トルコ風お粥 麦1カップ、鶏ささみ肉2~3本をさき、水たっぷりに、塩を入れた麦粥に、30~50グラムのこがしバターをかけた物)が、ユネスコの無形文化遺産に登録されている。
他国料理との関係
トルコ料理は、中央アジアにひろがるトルコ民族の伝統料理の要素と、ギリシャ、グルジア、シリア地方の料理の要素とが混ざり合って独特の発展を遂げた。
トルコ民族は、中央アジアからアナトリア半島へ移動した歴史があり、また、14世紀から20世紀の初めまではオスマン帝国として地中海周辺を支配していたため、これらの地域の料理と影響し合った。
トルコを含め、バルカン半島、ギリシア、レバノン、イスラエル、エジプト、チュニジアなど地中海東部地域の国々はおおむね共通した料理をもっているが、それでもトルコ料理の影響はギリシャ料理、レバノン料理、ブルガリア料理、ルーマニア料理などに顕著である。
また、その影響は周辺のアラビア半島などのオスマン帝国が支配した地域にとどまらず、北アフリカ(モロッコ料理など)やロシアの料理、ハンガリー料理、トルコ系移民の多いイギリス、ドイツにまで及んでいる。
素材
トルコ料理に使われる代表的な野菜としてはナス、タマネギ、豆類、トマト、キュウリなどがあげられる。ブドウ、アンズ、サクランボ、メロン、イチジク、レモンなどの果物、ピスタチオ、松の実、アーモンド、クルミ、ヘーゼルナッツなどの種実類もよく使われる。
香辛料はコショウ、コリアンダー、クミン、パプリカなどであるが、それほど多くは使われない。
ミント、イノンド、イタリアンパセリなどのハーブも好まれる。その他、オリーブ・オイルやヨーグルトなども調味料のように用いる。
前菜
コース料理では、前菜(メゼ(meze))として、オリーブの塩漬け、チーズなどの乳製品や、エズメ(ezme、野菜や豆などのペースト)、ジャジュック(cacık、液状のヨーグルトソース)、ドルマ(dolma、ナスやピーマンなどに米や肉を詰めた料理)やサルマ(sarma、ブドウやキャベツの葉で米や肉を包んだ料理)、ビョレク(börek:小麦粉の皮でチーズなどを包んで揚げたり焼いたりした、春巻やパイのような料理。
チウ・ビョレクなど多くの種類がある)などが出される。フムス(humus)もエズメのひとつで、トルコではノフット・エズメス(nohut ezmesı、「ヒヨコマメのエズメ」)と呼ぶこともある。数種の前菜をつまみながらラクを飲むことも多い。
|
|
肉料理
肉はイスラム教国であるため豚肉はほとんど用いられないことはもちろん、気候が肉牛の飼育に適さないため牛肉もあまり使われず、もっぱら羊肉や鶏肉が使われる。
ヒツジやニワトリの肉を使った焼肉料理はケバブ(kebap)と言い、串焼きにしたシシュケバブ(Şiş Kebabı)、ヨーグルトを添えて食べるイスケンデルケバブ(İskender Kebabı)、挽肉を用いたアダナケバブ、ドネルケバブに似た調理法のジャーケバブなどが有名である。欧米や日本でバーベキューなどで作る長串に刺した料理全般をシシカバブと呼ぶのはこれらの名前に由来する。
屑肉を固まりにし、回転させながら焼いたものを削ぎ切りしたドネルケバブ(Döner Kabap)はトルコ移民によってドイツなどヨーロッパに伝えられて身近なファーストフードとなり、1990年代の後半からは日本でも屋台が見られるようになり始めた。
ケバブに対し、挽肉を使ったハンバーグのような料理はキョフテ(köfte)という。ムサカ(musakka)はナスやジャガイモ、カリフラワーとトマトを挽肉と煮込んだキャセロール風の料理である。
メゼ(meze)と呼ばれる
魚介料理
海に近い地域では魚もよく食べられ、魚肉のシシュケバブ、ハムスィ(hamsi、ヨーロッパカタクチイワシ)やイスタンブルのサバのサンドイッチが有名。
黒海沿岸には、ハムスィ入りのバクラヴァを作る地域もある。
鰓から骨と肉を抜いたサバに詰め物をしたウクスムル・ドルマス(uskumru dolması)は主菜、ムール貝の外套膜の中に詰め物をしたミディエ・ドルマス(midye dolması)はメゼとして食べられる。
主食
穀類は小麦、米をいずれも使う。米はインディカ米、ジャポニカ米両方ともピラフに調理して食べる他、ジャポニカ米で様々なプディングが作られる。
小麦はエクメク (Ekmek、パン)やピザに似たピデ(Pide)や歴史的シリアのラハム・ビ=アジーンに由来するラフマジュン(lahmacun)、揚げパンの一種ピシ(Pişi)、マントゥ(Mantı、挽肉を詰めた小籠包のようなダンプリング)、スィミット(Simit、環形のゴマをまぶしたパン)、ブルグール(bulgur、パーボイルして挽き割った小麦)など様々に加工される。
デザート・菓子
デザート・菓子にも豊富な種類があり、ユフカ(yufka)という紙よりも薄い生地を使ったバクラヴァ(baklava、ハチミツやシロップ漬けのナッツのペイストリー)やギュラーチ(Güllaç)、スュトラッチ(Sütlaç、ライスプディング)ヘルヴァ(小麦粉やセモリナを使った菓子)、ムハッレビ(Muhallebi)のようなプディング、ロクム(Lokum、固めの求肥のような菓子)などが代表的なものである。
ドンドゥルマと呼ばれるアイスクリームは、サレップ(salep)というランの仲間の球根の粉末が入っているため、非常によく伸び、溶けにくい。
変わったものに新鮮な鶏胸肉と牛乳、米粉から作るタウク・ギョウスュ(Tavuk Göğsü)というプディングがあり、近代以前のブラン・マンジェと似ている。果物を用いたデザートにはコンポスト(komposto、生の果物のコンポート)やホシャフ(Hoşaf、ドライフルーツのコンポート)がある。
ドンドゥルマ(トルコアイス)
トルコの氷菓。トルコ語で「凍らせたもの」の意味で、トルコでは各種アイスクリーム、氷菓全般を指す。
一般的なアイスクリームに似ているが、粘りがあることが特徴。
日本国内ではトルコアイス(後述のトルコ風アイスとは異なる)とも呼ばれる。
トルコの伝統的なドンドゥルマは、砂糖、羊乳、サーレップ(salep)などが特徴的な原料となる。
サーレップは、トルコ山岳部に自生するラン科ハクサンチドリ属の植物Orchis mascula(オルキス・マスクラ)などの塊根を乾燥して粉砕した粉を湯に溶かし、成分を抽出した液で、砂糖などを加えて飲用にされる。
このサーレップに乳と砂糖を加え、いったん沸騰させた後、弱火で1時間ほど絶えずかき混ぜながらヨーグルト状の固さまで煮つめ、冷して固まった後に長時間練り上げ、繰り返し空気を含ませながら伸ばすことで餅のような粘りを生じさせる。
気温の高い地方でドンドゥルマが溶けて垂れるのを防ぐために粘度を上げる必要があり、増粘剤としてサーレップが使用される。
最も基本的な味は甘いミルク味もしくはバニラ味であるが、コーヒーやチョコレートなどで味付けしたものがある。
中でも特徴的なものとしてミルク味のものにトウガラシを加えて甘くかつ辛く味付けしたものがある。
店員が客にドンドゥルマを渡す際、わざとひっくり返したり、受け取らせなかったりなどといったフェイントをかけるパフォーマンス(ハスケル)をすることが多い。
トルコ人の多くはドンドゥルマを食す際に必ず水も用意しておき、合間に飲む事で咽喉を詰まらせる事を防ぐ。
サーレップがもたらす粘度が強力である為、この様な習慣が長年に渡り身に付いており、国外在住トルコ人はサーレップ未添加の現地のアイス(通常のアイス、もしくはいわゆる「トルコ【風】アイス」)を食す時ですら、水が傍に用意されていないと安心出来ない者が多い。
日本でトルコ風アイスと称した製品が出回っているが、その多くは原料、製法ともドンドゥルマとは全く違う製品である。
多くは、サーレップは使っておらず、海草などから抽出した増粘多糖類によって粘りをつけている。
トルコ以外の日本、台湾などの飲食店、露店で販売されているものにも、トルコの原料、製法と異なる場合がある。
家庭で作れるトルコ風アイス 納豆をボールで混ぜた後、納豆を出した後のボウルでアイスを混ぜる方法がTV(世界一受けたい授業(日本テレビ系列))で紹介された。
飲み物
トルコはムスリム(イスラム教徒)が国民の99%を占めるが、飲酒はほとんど自由に行われており(厳格なイスラム教徒は飲酒しない)ワインやビールは数多くの国産銘柄がある。
例えば、ピルスナー・ビールの「エフェス」(エフェス・ピルゼン)は最も有名なビール銘柄の1つである。
また、水で割ると白く濁ることで知られている酒のラク(rakı、アニスで香りがつけられた蒸留酒の一種)は、中東のアラブ人の酒「アラック」がトルコに伝わったものである。
春の子馬の出産期に醸造されるクムズ(kımız、馬乳酒)は、トルコ人が中央アジアに居住していた頃まで遡る古い歴史を持つ。
紅茶(チャーイ、Çay)やコーヒー(カフヴェ、Kahve)は食後にデザートと一緒に飲んだり、仕事中に一休みするとき、交渉事をするときなど、日常の様々な場面でよく飲まれる。
紅茶は蒸して「兎の血」と形容されるほど濃く煮出した茶を好みに応じて湯で薄める淹れ方が伝統的である。
ガラス製の小さなカップに注ぎ、角砂糖を溶かして飲む。
かつてはセマヴェール(semaver、サモワール)で湯を沸かし、保温のためにセマヴェールの上にのせたチャイダンルク(çaydanlık)というティーポットで茶をいれていたが、現在は下段の薬缶で湯を沸かし、上段の薬缶で茶をいれる2段式薬缶型のチャイダンルクが用いられるようになった。
ヨーグルトを冷たい水で薄めてよく撹拌し、塩味をつけたアイラン(ayran)という冷たい飲み物も大変人気がある。
ブルグールや雑穀から作られる甘酒のような低アルコール性発酵飲料ボザ(boza)は冬に好まれる。
シェルベティ(Şerbeti)は香りの良い花やナッツ、果物のシロップを氷水で薄めた飲み物である。
トルココーヒー ユネスコの無形文化遺産。コーヒー占いは有名。
コーヒーをバルカン半島から中東まで各地ではジェズヴェ(cezve)という小さな専用の鍋にコーヒー粉末と砂糖を入れ、直接火にかけて煮出す淹れ方が伝統的。
このような淹れ方はみられるものだが、欧米や日本では「トルココーヒー」と呼ばれて知られている。
トルココーヒーの文化と伝統はユネスコの無形文化遺産に登録された。
このコーヒーを飲み終わったカップの底の残滓を模様に見立て、模様から飲んだ人の運勢を占う「コーヒー占い」がある。
ヨーロッパ由来のタイプのコーヒーは、他の中東の国でも見られるように世界的な食品メーカー・ネスレが製造・販売するインスタント・コーヒーの名にちなんで「ネスカフェ」(Nescafé)と呼ばれることが多く、レストランのメニュー表などでもこの表記が見られる。
食事の作法
生活様式の洋風化以前は手を使って料理を食べていたが、スープやピラフ、コンポート、プディングを口に運ぶためのスプーンは古くから存在した。
西洋式のテーブルマナーの普及にともない、ナイフやフォークが使われるようになった。