イタリア料理の歴史
「地中海の食事」としてユネスコの無形文化遺産に登録
イタリア料理は、イタリアを発祥とする料理法で、世界の多くで好まれ多くの地域で料理されている。
2010年、イタリア、キプロス、ギリシャ、クロアチア、スペイン、ポルトガル、モロッコ料理と共に「地中海の食事」として、ユネスコの無形文化遺産に登録された。
日本のイタリア料理は「南イタリア」料理、全体では素朴な料理
ナポリなどの南イタリアの特徴が、日本で認識されている特徴であるオリーブ・オイルやオリーブ、トマトが使われる料理。
北イタリアでは隣接するフランスやスイス同様バターや生クリームを利用した料理が多い。
イタリア東部ではオーストリアやスロベニアの影響が見られる。
またシチリアなどの北アフリカに近い地域では、アラブ人やベルベル人の料理の影響を受けていてクスクスやアランチーニなどの料理が食べられる。
地中海に面する地域は魚介類を用いた料理も多く、地中海岸諸国以外のヨーロッパでは食べられることのほとんどないタコやイカが食材として使用される。
一方で北部や内陸の地域では肉や乳製品を使った料理も多く食べられる。
総体としては、素材を生かした素朴な料理が多い傾向にある。
「イタリア料理などという料理は存在しない」
このようにイタリアの料理は各地方によって、それぞれ特徴を持っている。
「イタリア料理などという料理は存在しない」と言う見方もある。
これは南北に長いイタリアは地理的にも多様な特徴があること、イタリア王国による統一まで多数の独立国家があり、その国ごとにまったく特徴の異なる、例えば、ナポリ料理、ジェノヴァ料理(ジェノバ料理)といった具合に郷土料理が発達しているためである。
トマトが広まる16世紀以前は魚醤ソースの地味なやつ
パスタはイタリア各地で好まれ様々な形で料理されている。
トマトの多用も特徴の一つであるが、トマトは唐辛子、とうもろこし、ジャガイモ同様、ラテンアメリカ原産であり、イタリアに広まったのは16世紀以降である。
それ以前の特徴としてはアンチョビの形で魚醤を多く用い、見た目も質素であった。
トマトの流入でヴァリエーションも増え、色彩も鮮やかになったが、反面それ以前の特徴の多くが失われたとの指摘もある。
「ローマ人は食べるために吐き、吐くために食べる」…バカ?
現代イタリア料理の基盤はフランス料理などと比べて大変古く、古代ローマ帝国までさかのぼる。
当時のローマ人は、食事にかける時間をとても大切にし、当時から1日3食の構成をとり、1食をコース料理にして2~3時間もかけて食事をする習慣があった。
また、彼らは、満腹になると、鳥の羽で咽喉を刺激し、作為的に嘔吐をして、空腹になるとまた食べたという。
セネカは、「ローマ人は食べるために吐き、吐くために食べる」と評している。
さらに裕福なローマ人たちの間で、腕利きの料理人を呼んで料理を客に披露することが流行った。
料理人達はそれぞれ競って腕を磨いて新しい料理作りに励んだことで、周辺の国々の追随を許さない優れた食文化が誕生し、これがローマ帝国の発展とともにヨーロッパ各地へと広がっていった。
具体例をいくつかあげると、ローマ軍の遠征兵士のスタミナ源として携帯されたことが契機となり、同様に欧州各地に広まったチーズや、メロンや牡蠣などもそうである。
パスタの手づかみは下品→4本フォークはイタリア発
イタリア料理は、フランス料理の原型でもある。1533年、フィレンツェの名門貴族であるメディチ家のカテリーナがフランスのアンリ2世に嫁いでパリに移り住む際、大勢のイタリア人料理人や香料師を連れてイタリア料理や氷菓、ナイフ・フォークの使用といったものをフランスに持ち込んだ。
それをきっかけにして、当時粗野だったフランスの宮廷料理やテーブルマナーが洗練された。
ちなみにフォークの爪は4本だが、これはナポリ王国国王フェルディナンド4世の宮廷でパスタがよくからんで食べやすいように爪の数を増やしたとされている。
このように、西洋を代表して世界三大料理に数えられているフランス料理は、イタリア料理の影響を受けて成長した。
ローマ時代から続くイタリアの食文化が西洋料理の母的存在といわれるのは、こうした歴史によるものといえる。