イギリス料理の歴史
イギリス料理 シンプル?手抜き?・・・素材を活かした料理文化。
イギリス料理(英:British cuisine)とは、イングランド料理、北アイルランド料理、スコットランド料理、ウェールズ料理に分けられ、また、これから派生したものにアングロ・インド料理がある。
ヨーロッパの他の国々におけるのと同様、イギリスの食文化には穀類を主食としているという自覚は概してとぼしいが、ジャガイモを揚げる(チップス)、焼く(ベークドポテト)、あるいは茹でるなどしたものが主菜の付け合わせとして大量に添えられることが多く、ジャガイモが事実上の主食となっている。
主食に準じる食品として、パンは薄くスライスされたトーストが好まれ、ジャムやバター、ベーコンや卵料理などを付けて食べられる。
同様に、小麦や米などで作ったプディングが好まれ、イギリス料理にはデザートから肉料理、主菜の付け合わせにいたるまで、多種多彩なプディングがある。
また、ポリッジなども伝統的によく食べられ、近年はシリアル食品やパスタを食べることも多い。
小麦や大麦などを加工したビスケット(ビスケットはクッキーを更に焼き固めて水分を飛ばした物、クッキーと同義)は、保存食として、古くは大航海時代の食料として活用され、現代でも軍隊の兵士が携行する戦闘糧食として納められている。
ローストビーフやステーキやシチューの調理法、あるいは獲った鳥やウサギを鍋で煮込んだり丸焼きにしたりするような料理に見られるように、イギリス料理は料理としての手間をかけない(フランス料理においてアングレーズ(イギリス風)というと、単に茹でただけか焼いただけの非常にシンプルな調理法を指す)、そのために、料理が素材そのものの味に大きく左右される。
つまり、素材が良ければでき上がる料理も美味しくなる事があるが、素材が悪ければそれも期待できない。
いい意味で考えれば、「シンプルで基本的な料理」という古の方法を保守しているといってもよい(もっとも、良い素材を茹で過ぎる事によって台無しにしているという観点も存在する)。
豪華な朝食 さすが大英帝国?20世紀初頭から豪華すぎと話題!
素朴でシンプルなイギリス料理ではあるが、イギリス式の朝食はソーセージやベーコン、卵料理がつくなど充実している。
卵やベーコンは、現代ならともかくとして、20世紀初頭以前においては、他国では庶民が朝食メニューとして食することは到底考えられない、ぜいたくな食材である(もっともソーセージは例外であり、イギリスの伝統的なものは、パン粉を半分以上混ぜ込んだ俗にバンガース/bangersと呼ばれる低級なものである)。
一般的に「イングリッシュ・ブレックファスト(ウェールズなど場所によって名称は異なる。総称はフル・ブレックファスト)」と言えば、より品数の少ないアメリカン・ブレックファストや温かい料理がないコンチネンタル(大陸式)・ブレックファストよりも上級に位置付けられる。
また、一般には料理とは区別されるが、イギリスのお茶菓子はイギリス以外の国でも名高く、美味しい菓子が多く知られている。
イギリスの家庭の主婦も、夕食メニューには手をかけなくても、お菓子づくりにはこだわりを持つものが少なくない。
イギリス以外でもそうだが、一日三食が普及するのは近年のことであり、かつては一日二食が普通であり、イギリスにおいてティータイムは昼食代わりでもあった。
そのティータイムのお菓子メニューは極めて充実しているのである。
カレーへの多大なる影響 カレーの歴史参照
大航海時代時代以降世界の海を制し世界中に大英帝国の版図を広げた歴史を持つイギリスは、植民地の料理を取り入れ、それを世界中に広めた歴史を持つ。
カレーを世界に広めたのはイギリスであり、広まったカレーもイギリスによりアレンジされたものである。
そういう意味においては、現在のイギリスでも「美味しい料理」は存在する。
言葉を変えれば、イギリスで美食文化が成立する以前に他国の食習慣が流入した、あるいは他国から流入した食事メニューはイギリス料理の範疇には加えられなかった、ということである。
そのためイギリスにおける外国料理、例えば中華料理やインド料理の店には、長い伝統がある場合も珍しくない。
チキンティッカマサラのように、イギリス発祥のインド料理も存在する。
最近ではフランス料理や、イタリアをはじめとする地中海料理、さらにはそういった外国の料理の影響を受けた料理店も存在する。
近年では伝統的なイギリス料理を改革した「モダン・ブリティッシュ・キュイジーヌ」と呼ばれる新しいイギリス料理の潮流が生まれ、美味しい料理を食することは難しいことではなくなっている。
まずい料理は「料理に無関心」という伝統。
かつて一時期、フランス料理などに比べて、高級料理の洗練が劣っていたこと、料理による調理法の洗練度の当たり外れが大きいだけであり、現在ではおいしいイギリス料理は多い。その一方で、朝食やティータイムは簡素化される傾向にある。
また、高級なレストランはともかくとして、パブにおいての料理であれば、過度に期待しなければ、それなりに美味しく食べられる料理が供されるという意見もある。
イギリス料理が不味いのは、イギリス人自身が認めているほどである。
そもそもイギリスには美食文化が存在しなかったのであり、それを理解しないことは、ある意味、イギリス文化に対しての無理解であるともいえる。
イギリス人は料理には無関心なのが伝統であり、料理に関心をもつ他国の習慣をむしろ侮蔑し、「料理なんてものに大切な時間や神経を浪費するなんてばかばかしい」と発言するイギリス人もいる。
おいしいの定義を、ぜいたくな美食家レベルではなく、生活者レベルのほどほどのおいしさと手軽さというレベルに設定するのであれば、イギリス料理はむしろ合理的であり、生活文化における必要度を超えて過度に美食を追求する欧州大陸の文化こそ非合理であるとの主張もある。
「過度な加熱」マズい理由は鮮度の高い食材が手に入らなかったから。
マズいと言われる理由は、野菜は本来の食感がわからなくなるほど茹でる、油で食材が黒くなるまで揚げる、麺を必要以上にゆでて、歯ごたえをなくすなどといった、イギリスでよく行われる、食材本来の味や食感を残さないほど加熱する調理法が他国人には好まれないからである。
これは、産業革命以降の都市居住の労働者階級の家庭では、新鮮な食材を入手することが困難であった。
食物を加熱殺菌することが奨励された当時の衛生学の啓蒙が相まって必要以上に食材を加熱する調理法が普及、定着したもの。
衛生学上の問題が解決して以降も、「旨い料理を食べることに無関心」というイギリス人気質もあり、美食が贅沢という習慣が生まれないうちに、それがイギリス料理の伝統として成立してしまったのである。
現代ではイギリスでも豚肉100%のソーセージが普通に販売されているが、「ドイツ風のソーセージ」(本当は本来のドイツ風とは異なるが)という認識がある。
またパン粉を混ぜたイギリス風のソーセージも、元来は飢饉食であったものが、伝統として定着したという説がある。
ありえないがありえるイギリス料理。「客が好みで味付けすべし」。
現在においてもイギリスのレストランの多くにおいては、高級店であっても、塩や酢などの調味料がテーブルに並び「客が好みで味付けすべし」という状態であり、他国では考えられない状態である。
結果としてイギリス料理で美味しく食べられるものは、せいぜいローストビーフやステーキ程度という評判が定着してしまった。
このような状況になったのは、かつてのイギリス貴族が、日曜日には牛を一頭殺してローストビーフやステーキを食べるという習慣があった事も原因である。
一頭分の牛肉は1日で食べきれるものではないため、平日の食事では日曜日に残った肉をそのまま、あるいは再び調理しなおして食べる事になる。
また残り物の肉を食べる場合も、食べる人が好みで味付けする場合が多かった。
結果として日曜日に食べるローストビーフ以外は、冷たい肉か、あるいは火を通しすぎた肉を食べ、また個人が好みで味付けするのが当然という食習慣が成立してしまった。
1902年から発売されたマーマイトのように、食味が極めて劣悪な食品でありながら、栄養価が非常に高いという「合理的判断」から、イギリスないし旧イギリス植民地において、大衆食として広く愛され、普及した例もある。
イギリス料理のイメージアップを始めた模様。
イギリス料理に対するマイナスイメージを払拭しようとする試みも始まっている。
日本においては、2013年より在日本英国大使館が「Food is GREAT」「A Taste of Britain」「ためしてみて、美味しいイギリス」と題したキャンペーンを展開している。大
使館の広報部マーケティングマネジャーは「英国の食べ物はまずいという、10年ほど前にいわれていたことが、日本では都市伝説化している」]と主張しており、日本駐箚英国特命全権大使のティモシー・ヒッチンズを筆頭に大使館職員らがイギリス料理のイメージ改善に取り組んでいる。